ASMRをモノラルで聴こうという話
当記事は「君は男3人で添い寝しながら添い寝ASMRを聴いたことがあるか - 旅程未定」の追記である。まだ読んでいない方はまずそちらの記事を読んでいただくことをおすすめする。
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皆さんもご存知のように、この世にはASMRというものが存在する。ASMRという概念が広く一般に知られるようになって数年が経ち、その間に自然音から咀嚼音、心音からR-18に至るまで幅広いジャンルのASMRが供給されてきた。
その中でも特に私たちの周辺でよく耳にするのが、ステレオ録音方式の一つであるバイノーラル録音を利用したいわゆる「バイノーラル音声」のASMRである。
耳という感覚器官はすごいもので、音の鳴っている場所の左右だけでなく前後や上下、距離といった情報をも感じ取ることができる。
これを利用し、ASMRee(ASMRを提供する人々)は人間の頭部をかたどったような形のマイクを用いて録音を行う。そうすることで「あたかも自分の目の前、なんなら目の横、目の後ろにいるかのような感覚」が生み出される。
これがバイノーラル音声である。
バイノーラル音声は、ASMRer(ASMRを聴く人々)側にもそれ相応の環境が求められる。
音声を録音したそのままの環境をできる限り忠実に再現するためにはこちら側も十分な機材が必要で、最近ではfinal社のE500を筆頭に「バイノーラル用イヤホン」というカテゴリーのイヤホンすら市販されるようになっている。
音声を録音する側は防音室や高額な機材を用いて収録を行い、音声を聴く側は専用のイヤホンでそれを楽しむ。より臨場感のある、よりリアルな感覚を求めてASMReeとASMRerたちは日々環境作りにいそしんでいるわけである。
当記事は、そのたゆまぬ努力を台無しにするものである。
以前から私は、「訪問したオタク邸の音声フォルダに眠っている18禁ASMRをREPAERにぶち込んでモノラル化しパソコンの外部マイクで流す」という行為にハマっていた。この時点であらゆるものに対する冒瀆を逃れられないのは自分が一番よく分かっている。
ある日訪れた、厳密に言えば訪れてから何日も居候していたオタク邸で事は起こった。
家主Tは、熱心なASMRerである。笛は吹かないが豚を食べて暮して来た。そして耳が人一倍に敏感であったかどうかは分からないがその日も添い寝ASMRを聴いて寝ると言い始めた。
実は彼はその前日も同じようにASMRを聴きながら寝ていたらしいのだが、まるで全人類の就寝ルーティンに添い寝ASMRが組み込まれているかのような自然な流れでの入眠に私は違和感を覚えなかったようである。
2度目にして引っ掛かった。「あいつは一体どんな音声を聴いてるんだ?」
気になることには気になるが、ここでASMR・バイノーラル音声の性質が問題になってくる。ASMRをASMRとして楽しめるイヤホンはこの場に1つしかない。一方で、その場にいたのは3人。どうやっても全員が正しくASMRを聴くことはできない。
ここで、過去の経験が役に立つ。イヤホンがないならスマホで流せばいいじゃないか。
もちろんスマートフォンの内蔵スピーカーにASMR対応機能などない。だが、外部スピーカーから爆音で流れる18禁ASMRの醍醐味を理解している私に敵はなかった。
「スマホを床に置いてスマホのスピーカーで流せばいいのでは?」
3人の異常独身男性が、添い寝ASMRの環境構築に大切な「布団」という機材を携え1台のスマートフォンを囲んで横になっている。
もう、この時点で紛れもない地獄が始まっていた。隣のオタクKはキラーワードがささやかれるたびに「ンフッ」「オッ」という声を上げる。就寝ルーティンに添い寝ASMRが組み込まれている家主Tはそれと対照的に全く動じるそぶりを見せない。長いASMR生活で耳が高い添い寝耐性を獲得した、まさに添い寝ASMR強者である。
最初はスマートフォンを中心に3人が放射状に寝る形で彼女の思い出話に耳を傾けていたのだが、隣で聴いていたKがおもむろに私の布団にもぐりこんできた。
「一緒に寝る……」
添い寝ASMRの環境構築に大切なものその2・「彼女」が突然隣に現れたのである。Kは隣で寝る私の腕に抱きついてくる。あたかも、スピーカーの向こうの『彼女』を私に求めるかのように。
こうなったらもう3人を止める手立ては存在しない。異常独身男性3名、現状を正確に描写するならば2+1名のキモさゲージが限界を突破していく──────────
キモさゲージの上昇は思わぬ形で打ち止めとなる。
内蔵スピーカーを通して語る彼女が言うには、どうやら思い出話の次は耳かきをすることになったらしい。
私の経験では、それはモノラル化ASMRの終わりを意味していた。
あなたは、耳舐めASMRをモノラルで聴いたことがあるだろうか。
地獄である。実在性を失いもはや何の音か分からなくなった謎のジュルジュルした音が、左でも右でもなく「前」から迫ってくるのである。もはや耳舐めではなく「顔舐め」である。
これを知っていた私は、モノラル化された耳かき音声がスマートフォンから流れるとどうなるか、を簡単に予想することができた。
果たして、右耳、現状を正確に描写するならば「中スマートフォン」に対する耳かきが始まった。
ゾリッ ゾリッ ゴリッ バリバリバリバリ……
全てが終わった音がした。彼女が善意で始めてくれた耳かきが、オタク邸の畳を削り取っていく。ストレスだろうか。さすがに彼女も3人を同時に相手するのは難しかったのかもしれない。彼女には後で謝っておきたい。
モノラル化された彼女との添い寝は、こうして幕を閉じた。
これが「君は男3人で添い寝しながら添い寝ASMRを聴いたことがあるか」で語られた、一夜のストーリーの大枠である。
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モノラルでASMRを聴く最大の利点は、「複数人で楽しめる」ということだ。
モノラルでASMRを聴く最大の欠点は「そもそもASMRは複数人で聴くものではない」ということと、「ASMRは楽しむものではない」ということ、そして時に「顔が舐められたり畳が削り取られたりする」ということだ。
以上を参考に、あなたも是非ASMRをモノラルで聴いてみてほしい。
何かスマートフォンの下に敷くものを用意すれば完璧だ。
「それっぽい画像作るやつ」をやろうという話
タイトルの通りである。
「それっぽい画像作るやつ」というのは私の命名だ。
「それっぽい画像」が何を意味するのかは後で説明するとして,私が「それっぽい画像作るやつ」を始めたきっかけは以前Twitterに上げたこの画像である。
アイドルマスターシンデレラガールズの藤原肇というキャラクターである。
……何というか,「それっぽい」ではないだろうか。少なくとも私は「それっぽい」と思う。
この「それっぽさ」を言語化するとすれば,恐らく「デザイン志向的な感じ」であったり「ちょっとおしゃれを気取ってみたような感じ」であったりになる。
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本題に入る。
なぜ私はここで「それっぽい画像作るやつ」をやろうという話をしているのか。
最も簡単に言えば「デザインの幅を広げよう」ということである。
動画の投稿がないことを差し引いても,とりあえず私は途中下車の動画を作る「下車作者」である。
下車作者が動画で扱う素材は何だろう。
駅名標,列車の走行動画,駅舎の画像,発車標……
一方,下車ではない音MADが扱う素材は何だろう。
BB,GB,キャラクターの切り抜き,アニメ・CMのワンシーン……
これから何が分かるか。「下車作者は切り抜き型の素材を扱う機会が一般MAD作者に比べてかなり少ない」ということである。
もちろん裏を返せば一般MAD作者より下車作者の方が扱いに慣れた素材もあるのだろうが,何しろ私は下車しか作ったことがないので下車の視点から述べさせていただいている。
この「切り抜き慣れ不足」を解消するために始めたのがこの「それっぽい画像作るやつ」である。
一般音MADにありそうなカット,
静止画系MADにありそうなカット,
何かのジャケットにありそうなカット,
といった具合に「普段扱わない素材を用いてデザインの引き出しを増やそう」という趣旨でやっているのがこの「それっぽい画像作るやつ」なのである。
私は偶然手元に切り抜き素材があったのでこれを使ったが,「それっぽい画像作るやつ」に使用できる素材はアイマスの切り抜きに限らない。
静止画なのでもちろん移動軌跡を考える必要はないし,「イージングの何番を使おう……」「加減速の中間点をどこに置こう……」「エンコードしたらなんかイージングが直線移動になってる……」といった「下車動画制作あるある」に震える必要もない。
多分頭のどこかにあるであろう「下車じゃないどっかで見たようなデザイン」を脳内の押入れから引っ張り出してきて,またはYouTubeやニコニコ動画といった発想の無料オンラインショッピングサイトから持ち帰ってきて,自分の思う「いい感じ」「それっぽい感じ」に並べたらそれは既に「それっぽい画像」だ。
最低限の労力で表現の可能性を広げられるかもしれない「それっぽい画像作るやつ」。
みんなもやろうね。「それっぽい画像作るやつ」。
「下車を作るのに下車だけを見ていては『下車めいた下車』しか作れない」ということはかなり前より指摘されていた通りである。「下車めいた下車」すら投稿できない作者のうわごとはこれで終わりにする。